症例一覧

症例詳細(外科)

脾臓腫瘍① 血管肉腫

症状

虚脱、食欲廃絶、可視粘膜(唇裏の粘膜)蒼白のため受診

検査

血液検査でHCT:%、腹部超音波検査にて脾臓腫瘍と、その周囲に出血を確認

治療

循環不全のため点滴など3日間実施。その後、再度破裂予防のため、外科手術を実施

治療後

病理検査にて血管肉腫と診断

血管肉腫とは??

まず脾臓とは、古くなった赤血球を処分したり、血液を貯蔵したり、免疫機能など様々な役割を果たしています。そこに腫瘍ができると出血を起こす可能性があります。

脾臓腫瘍の中には、悪性と良性の腫瘍の割合が半々とされております。その中でも血管肉腫は悪性腫瘍に分類され、悪性腫瘍の2/3を占めるとされています。

血管肉腫は特に破裂しやすく、腹腔内出血によるショックや貧血で来院されることもあり、場合によっては失血によって死亡してしまう子もいます。

また、血管肉腫は悪性ということもあり、転移がしやすいです。

肝臓に転移(犬の80%)
心臓の右心耳に転移(15〜25%)
脳への転移(14%)

血管肉腫に対する治療は、外科手術による摘出が一般的な治療です。摘出後は、抗がん剤や、その他内科的治療にて実施することもありますが、予後は短いとされています。

脾臓腫瘍② 脾辺縁帯リンパ腫

症状

元気・食欲低下、可視粘膜蒼白で受診

検査

血液検査にてHCT:31%と軽度貧血、腹部超音波検査にて脾臓に腫瘍を確認

治療

持続的な出血は認められず。循環状態が悪かったため、点滴などにて改善を図ってから、3日後に外科手術を実施

脾辺縁帯リンパ腫とは??

脾臓の白髄の正常な構造を置き換えるB細胞で構成される悪性腫瘍です。B細胞とは、体の中に侵入した病原体を排除するために必要な「抗体」を作って、病原体と戦うための免疫細胞です。

脾臓の低悪性度のリンパ腫と言われ、進行が比較的ゆっくりなものとされています。脾臓の悪性腫瘍の中では、約6%と稀な腫瘍とされています。

脾臓摘出のみで、長期生存が可能とされています。平均2年前後とされています。そのため、脾辺縁帯リンパ腫では、脾臓の外科手術はとても有用な治療法とされています。

化学療法の有効性は現在のところ不明とされています。

症例詳細(内科)

猫伝染性腹膜炎(FIP)

症例

猫、7ヶ月齢

症状

他院で去勢後に呼吸困難で受診

検査

血液検査にて、TP:10.2と高値、胸部超音波検査にて胸水貯留を確認。できるだけ胸水除去。胸水は、淡い黄色で、粘稠度(どろっとした)液体であった。胸水検査では、TP:9.2、ALB:3.1を確認した。FIP診断基準の中に、①胸水中TP/血清TP=0.9(>0.3)、②血清中TP=10.2>3.5、③A/G比=0.5(<1.0)の全てに該当した。経過と検査から総合的に、FIPと診断。

治療

wetタイプのFIPと考え、飼い主様と相談し、モルヌピラビルにて84日間治療を行った。当日だけステロイドを投与した。

現在、84日間の治療が終了し、FIPの再発もなく、体重が増え、食欲もあり、体調に問題なし。

猫伝染性腹膜炎(FIP)とは?

多くの猫が、猫コロナウイルス(FCoV)を持っています。FCoVは容易に感染するものの弱毒性のウイルスであり、無症状〜下痢嘔吐などの腸炎に似た軽い症状を持つに過ぎません。

しかし、猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルス(FCoV)が突然変異によって、猫伝染性腹膜炎ウイルスとなり、致命的な免疫性ウイルス疾患となります。

FIPウイルスへ変異する原因は未だ解明されておらず、何の拍子もなく突然起こることが多いです。特に、1歳未満の猫ちゃんや、多頭飼育での発症が多いという疫学的な特徴があります。生存率は極めて低く、発症すると平均生存期間がわずか1週間程度とされてきました。

長年、効果的な治療法はなく、数年前までは致死率の高い不治の病とされてきました。しかし、人のコロナウイルスをきっかけにFIPの治療も大きく進歩しました。現在では、十分に治る可能性のある疾患となりつつあります。

当院でも治療実績があります。従来のムティアンという治療実績は高いものの、価格がかなり高額ということもあり、100万円近くかかることがほとんどです。当院では、治療費を大幅に抑えたモルヌピラビルという薬で治療を行っています。ムティアンよりは治療成績は少ないものの、※モルヌピラビルでも治療効果としては高いと考えています。

モルヌピラビルで治療した猫伝染性腹膜炎の18例 Molnupiravir treatment of 18 cats with feline infectious peritonitis: A case series

FIPの治療には、84日間という投薬期間を経て、治療が終了となります。その後は、1ヶ月毎に再発がないか検査をして確認していきます。

⭕️FIPと診断された

⭕️FIPの疑いがあると言われた

⭕️FIPの症状かもしれない…

⭕️治療費が高くて悩んでいる…

等々、FIPでお悩みの際も、ご相談ください。